日本代表が1トップなのはなぜ?歴代期待の大型FWは?向いているフォワードを徹底解説

日本代表はなぜ1トップ? 戦術

近年の日本代表の1トップで、絶対的なレギュラーは前田遼一、大迫勇也の2人です。MFの本田圭佑が臨時で務めることもありました。これらの選手が起用されてきたのはなぜでしょうか。この記事では1トップに必要な役割、向いている選手を解説していきます。

2000年代半ばには1トップ(3トップ)が主流になり、2010年以降は日本代表でも1トップが主流になりました。この記事ではそれ以降の年代の選手について考えていきます。

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大型FWとして期待の7人

身長生まれ年
平山相太190cm1985年
森本貴幸180cm1988年
大迫勇也182cm1990年
杉本健勇187cm1992年
鈴木武蔵186cm1994年
小川航基186cm1997年
上田綺世182cm1998年

平山相太、森本貴幸、大迫勇也、杉本健勇、鈴木武蔵、小川航基、上田綺世。期待の大型FWとしてよく挙がるのが主にこの7人です。

高さ、身体能力を活かしたタイプは他にもいましたが、足でのゴールも得意な本格派のストライカーとして、特にこの7人が注目されてきました。

1トップ、CF(センターフォワード)タイプとは

1トップにはどういった選手がむいているのでしょうか。

理想的な1トップはベンゼマ(185cm)、レバンドフスキ(185cm)、ケイン(188cm)の3人です。
大柄でペナルティエリア内で強く、足元で受ければ自分でゴールを奪え、チームを活かすプレーもハイレベルでこなせる選手たちです。

2トップなら大柄な選手と小柄な選手で役割分担できますが、1トップならその役割を1人でこなすために大柄な選手が理想です。ペナルティエリア内での空中戦はもちろん、ペナルティエリア外でのルーズボールや縦パスを受けてキープできるフィジカルが求められるからです。

日本代表の1トップにもそういった万能な大型FWが期待されています。

セカンドトップ、ウイングタイプ

近年の日本代表ゴール数トップ5

ゴール数出場試合数1試合あたりのゴール数
岡崎慎司501190.42
本田圭佑37980.38
香川真司31970.32
大迫勇也25570.44
南野拓実17470.36
※2023年3月現在

これは近年の日本代表ゴール数トップ5です。得点力のあるFWには大迫以外にも岡崎、南野がいます。なぜ1トップにしないのでしょうか。

なぜならこの2人はセカンドトップタイプの選手です。前田遼一や大迫といった1トップの選手とコンビを組んで、実質2トップとしてプレーすることで力を発揮しています。

身長生まれ年
岡崎慎司174cm1986年
宇佐美貴史178cm1992年
武藤嘉紀179cm1992年
久保裕也178cm1993年
南野拓実172cm1995年

なぜ2トップじゃないの?1トップのメリットとは

ではなぜ2トップにしないのでしょうか。1トップと比較し考えてみましょう。

2トップではゴール前にいる2人のコンビネーションでゴールを狙います。上で挙げた前田、岡崎の2トップなら、前田が空けたスペースに岡崎が侵入しゴールを狙います。

前田、岡崎の2トップなら、前田が空けたスペースに主に岡崎が侵入する。

次に1トップについて考えてみましょう。

1トップの場合、岡崎がゴール前にいない分、スペースが大きく空いています。ここに香川、本田、岡崎の3人のうち誰かが侵入しゴールを狙います。これにより2トップのメリットを損なわずに、多彩な攻撃を繰り出すことが可能になります。

1トップが空けたスペースに、香川、本田、岡崎が侵入する。

2000年代以降は1トップが主流になり、日本代表でも2010年代からは1トップがほとんどです。1トップなら余った1人を中盤やサイドに回すことで数的優位を作り、試合を優位に進められることも大きなメリットです。

現代では前線に何人も侵入し、4トップ、5トップのような形を形成することも多くなってきています。

スピード、運動量タイプ

身長生まれ年
永井謙佑178cm1989年
浅野拓磨173cm1994年
前田大然173cm1997年
林大地178cm1997年

カウンターアタックやプレスをするために、スピード、運動量が持ち味の選手を起用することもあります。

永井、浅野、前田大然、林はW杯やオリンピックで1トップとして起用され活躍しました。スピードだけでなく、DF裏へのロングボール、ルーズボールを拾うためのタフさも必要です。

1トップ向きの選手とは

C・ロナウドのポジションは?大柄でも1トップとはかぎらない

C・ロナウドがレアル・マドリーで活躍していたときは、CFのベンゼマとのコンビで得点を量産していました。ロナウドは身長187cmですが、上で説明したセカンドトップ、ウイングタイプのプレイヤー。大柄でヘディングが強いからといってCFではない例です。

杉本健勇、鈴木武蔵にもおなじことが言えます。

杉本は2016年にJ2で14ゴール、2017年にはJ1で22ゴールとっています。J2時は2列目、J1では1トップですが、トップ下の山村和也とのコンビでゴールを量産していました。

鈴木もシャドーでのプレーを得意としています。万能なCFタイプというよりは、スピードを活かしたプレーが特徴の選手です。

コンビ次第では1トップにもなれる

身長生まれ年
山村和也186cm1989年
鈴木優磨182cm1996年

1トップの場合、FWの仕事全てを1人でこなさなくてはいけません。しかし杉本、山村コンビのように近くのポジションの選手と役割分担できれば活躍できる可能性があります。

鹿島時代の上田、鈴木優磨コンビもおなじです。上田の代わりに鈴木優磨がいろいろな役割をこなすことで得点の役割に集中できていました。

ベルギー代表のルカクもその1人です。ルカクは身長191cmの大型FWで、1トップの代表的選手と思われがちですが実際はそうではありません。広いスペースからゴールへ向かうプレーやフィジカルを活かしたプレーなど、自分の得意な形に持ち込めたときは驚異的ですが、その形に持ち込む術には長けていません。インテルではラウタロ・マルティネスとの2トップで役割分担することで真価を発揮しました。

前線の「水を運ぶ人」

水を運ぶ人とは、主役のために地味な役割をこなす黒子役のことです。

オシム元日本代表監督が使った有名な言葉です。この言葉は全員が主役ではサッカーが成り立たないことを説明するために使われました。代表的な選手はボランチの鈴木啓太です。攻撃的な中盤を支えるのに必要な選手として重宝されていました。

これはCFにもおなじことが言えます。ボールを前に運ぶためには、クリアボールを競り合ったり、縦パスをキープして押し上げるといった地味な役割を誰かが担わないといけません。フランス代表のジルーは2018年W杯優勝の立役者です。CFで大会0ゴールでしたが、エムバペ、グリーズマンの活躍を支えました。

日本代表でも強力な2列目を活かせる1トップが重宝されます。前田遼一と大迫は日本有数のストライカーでありながら「水を運ぶ人」でもありました。

ではその役割を鈴木優磨、山村のような選手が担うのはどうでしょうか。トップ下やサイドなど、2列目の位置に黒子役を起用する方法です。その場合、2列目の選手が一人代わりに外れることになります。2022年W杯メンバーなら鎌田、久保、伊東、堂安、三笘、南野、相馬から3人選ぶところを2人しか選べないということです。さらに代表活動で想定しているのはW杯で格上や同格と戦えるメンバーです。ドイツ、クロアチア、ベルギーなどにJリーグで発揮しているようなフィジカル面での優位を見せられるでしょうか。

結局、1トップが万能タイプか黒子役になるでしょう。

コンバート

トップ下、ウイングタイプが1トップになることも

身長生まれ年
金崎夢生180cm1989年
柿谷曜一朗177cm1990年

実は世界的CFも最初からずっとCFだったわけではありません。ベンゼマはレアル・マドリーの前所属先、リヨン時代はウイングでした。レバンドフスキはドルトムントでトップ下からCFにコンバートされました。

日本代表の1トップでは前田遼一、柿谷曜一朗もトップ下からコンバートされたので、他のポジションの選手にも可能性はあります。

個人的には大迫の代役として最も期待したのは金崎夢生です。元々は2列目のアタッカーでしたがポルトガルでFWにコンバート。元々のテクニックを活かしたプレーに加え、身体を張ったプレーやゴールに貪欲な姿勢など、CFに必要な要素を数多く持った万能なストライカーです。

トップ下やウイングからコンバートされる選手は万能なFWになることが多いです。なぜならオシム監督の言葉を借りるなら「ポリバレント」な選手だからです。ポリバレントな選手とは、本来のポジションで発揮していた能力を、別のポジションでも発揮できる選手のことです。本来のプレーに加え、FWのプレーを身に着けられれば万能型1トップになることが可能です。

0トップ

近年では本田、鎌田、南野のようなトップ下の選手が1トップとして起用されることがありました。CF以外の選手を1トップに起用することを0トップと呼ぶならこの3人が当てはまります。しかし本田、鎌田のように大柄でキープ力もある選手を1トップで起用するのは、元々のCFの代役としての意味合いが大きいです。

ただ1トップには地味だけどチームにとって必要な役割はたくさんあります。W杯で格上と戦うことを想定するなら、クリアボールを拾い攻撃につなげられるキープ力、カウンターをゴールにつなげられるスピードや動きが求められます。そういったプレーができるCF的資質を持ったMFなら可能でしょうが、格上チームが行うような0トップを期待するのは難しいでしょう。

まとめ

・現代の1トップには得点だけでなく、それ以外の地味なプレーもできる選手が求められる
・前田遼一、大迫、金崎のような万能型FWが理想
・永井、前田大然、浅野、林のようにスピード、運動量タイプも戦術次第では可
・セカンドトップタイプの選手でも、上2つになれる可能性があればコンバートもあり

代表では短期間でチームを作る必要があります。いろいろな戦い方に合わせられる万能FWが理想ですが、相手との戦力差や戦術を考えた上でフィットするタイプのFWを起用することも考えられます。

大迫は2014年W杯のときは24歳。そのときは活躍できませんでしたが、28歳でむかえた2018年W杯ではグループリーグ突破の立役者となりました。

2022年W杯で活躍した浅野は大会時には28歳です。元々は2トップで活きる選手で、ウイングやCFは適任とは言えませんでした。しかしヨーロッパでの経験を積むにつれて代表でも高パフォーマンスを発揮するようになりました。

ハリルジャパンでは「縦に早いサッカー」、「デュエル」といった言葉がよく取り上げられました。これはハリルのスタイルというよりはヨーロッパなどのハイレベルなサッカーにおいては標準のプレーです。現時点では力を発揮できていない選手も、良い経験を積み、こういったスタイルに適応できれば代表で活躍することができるでしょう。